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2007年 01月 28日
「新」国立美術館を訪れた。同時に3つも展示があって、そのうち2つも無料だと言うのがうれしい。その一つは、設計者黒川紀章の作品展で、当日は本人の講演会をやっていた。すごい人だかりで、1歳児を連れた僕は、通りかがっただけなのだが、その時に聞こえてきた彼の話は、おおむねこんな内容だった。
「読み手が多様な受け取り方ができるようなものがいいんです。皆さん、いちばん多様な受け取り方ができない読み物を知っていますか?・・・それは、六法全書です。(会場笑)」 まるで、みかんぐみの曽我部さんなんかが言いそうな、なんとも今風の発言で少し違和感を覚えたが、僕もまさにおっしゃる通りだと思う。もはや黒川さんの若かりし頃のような、スター建築家が一般の人々に建築や生活のあり方を与える時代ではない。 「新」国立美術館を上空から見た写真がある。 これが、「新」国立美術館の全てを表している。 そりゃあ、こんなにうねうねしたガラスの壁面も、至極きちんと積み重ねられたいくつもの白い箱も、それらのあいだの地面に突き刺さったでっかいコンクリートの円錐も、日常風景のなかでそうお目にかかれる代物ではない。しかし、そこでの空間体験は箱の中で美術に集中「させられ」て、出てきて休憩「させられ」るという感じである。 確かに大きな白い箱は展示には最適な空間だろうし、ゆっくりくつろぐにはやさしい局面に包まれたアトリウムはすばらしく居心地がいいだろう。でも、そもそも、そういう風に美術を鑑賞するというのが、学校や会議場のようなスタイルで、まったくもって、たいくつではないか。むしろ、展示スペースとフリースペースが逆転していて、アトリウムで美術の展示を見ながらゆっくりくつろげたり、ホワイトキューブのカフェでコーヒーを飲みながら集中できたりする美術館の方が「新」だったんじゃないだろうか。
by rystail
| 2007-01-28 10:01
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