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2005年 08月 12日
成長の限界 人類の選択 を読む。
地球環境問題に特に興味があるわけではない。 どちらかといえば、身の回りの「地域」環境問題の方が気にかかる。 毎日の通勤路にゴミが散乱しているか/四季の草花が溢れているか、窓を開けると室外機の熱風が吹き込むか/さわやかな風が入ってくるか、といった問題の方がリアルで切実に感じられる。 しかし、メディアの風潮は、身の周りの具体的な問題を扱うより、概念的な全地球規模での(ワルモノを限定できない)問題を取り扱うことに傾向しているように思う。情報過多の社会全体が、環境問題をより大規模に、より概念的に、強調し拍車をかけ、不安を煽る。そんな情報が知らず知らず蓄積されているおかげで、実生活での行動パタンも、「地球環境にやさしいから」と言う理由で、ゴミの分別をしたり、スーパーで袋を断ったりする。エコロジーは一種のステータスとなっている。 これ自体はなんら悪いことではない。でも、分別したゴミがどうなるのかは(おそらく大半の市民には)ブラックボックスだし、買い物袋の量が減ることで何に良い影響が出ているのかは実の所よく分からない。精神的な満足感は得られたとしても、具体的に何かが変わることが目に見えるわけではない。何かを棚に上げていたり、何かがすり替えられている気がしないでもない。。。 もちろん、、地域環境の延長が地球環境だし、地球環境の一部が地域環境であるわけだ。このつながりを意識した問題提起が重要である。(もしかしたら、これこそランドスケープ・アーキテクチャの中心事項なのかもしれない。) 本書は、1972年に刊行された「成長の限界」のシリーズ3部作目である。 (思えば、僕が生まれた時には既に、春は沈黙(1962)していたし、成長は限界(1972)を迎えていたのである) 成長の限界 The Limits to Growth (1972) 限界を超えて Beyond The Limits (1992) 成長の限界 人類の選択 The Limits to Growth The 30-year Update (2005) 本シリーズが常に唱えていることは、既に「行き過ぎ」ていることに対する警鐘である。人類はポイントとしての限界ではなく、ペースとしての限界を既に超えており、地球を崩壊に導かないためにペースダウンが必要であるとして、様々なシナリオを提示している。 3作目では72年に提示されたシナリオの具体的な検証が一部なされているものの、「21世紀の最初の10年はまだ成長の時代である」とし、「行き過ぎの結果が誰の目にも明らかになるにはもう10年かかるだろうし、行き過ぎたという事実が一般に認められるには20年かかるだろう」としている。そして「『成長の限界』から40年後の2012年に、改めて本書の最新版を出すつもりだ」そうである。そう言われると、気になるのは次の第4作目である。(今回の3作目はいったい。。。出版も3年遅れちゃってるし。。。) まずはタイトル。限界→限界を超えて→限界→ときたら、次は・・・ 限界を終えて After The Limits (2012) でどうであろうか。 72年に設定した「限界」とはいったい何であったのか。過去の検証と新たな問題設定へ向けた新しいシリーズへの土台となるであろう。 さらに気になるのが本の体裁である。 1作目から2作目の厚さの増加はまさに「幾何級数的」である。本書にはフランスの小話がある。「毎日大きさが2倍になるスイレンが30日で池を覆いつくしてしまう。池の半分までスイレンが覆った時、池が覆い尽くされないようにするためには、どれだけの時間が残っているか」答えはもちろんたったの1日である。はじめのうちはたいした増加に見えなくても、放って置けば取り返しのつかないことになるという幾何級数的増加の怖さを示したものである。 そこで、そのことに気づいた発行元のダイヤモンド社は、この幾何級数的ページ数の増加に対応すべく、3作目ではサイズを拡大させた。なるほど奥深いシナリオ。しかしこれでは、「石油の代わりに天然ガスを使った」ことに過ぎない。根本的問題は積み残されている。となれば、4作目はどうするか。これより大きなサイズの本は単行本としては難しいだろうし、ページ数もこれ以上は増やせないだろう。コンテンツそのものを減少させるというのが正攻法だろうが、次作はなんと言っても記念すべき節目の発行なのである。その頃には、電子文庫の類が発達していて、データを発信するだけで流通が可能となっており、限りある資源を無駄遣いせずに済む?ようになるかもしれない。いずれにしても、採算が取れなければ成立はしない。 環境問題の縮図としての出版物。来るべき2012年が楽しみである。
by rystail
| 2005-08-12 22:08
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